ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『宇宙の果てで森山と握手』(イガラシイッセイ)その2

今回の記事は前回の続きになります。★受け身&アクティブ 結論から先に述べてしまうと、私は本書を読み、「結局、自分の存在って何なの?」というテーマを、作者のイガラシさんは追求されたかったのだと確信しました。その視点で見ると、主人公である「オレ…

『宇宙の果てで森山と握手』(イガラシイッセイ)その1

文学フリマ書評第8回目は、イガラシイッセイさんの『宇宙の果てで森山と握手』。イガラシさんは、前回取り上げたしーなねこさんと同じ、文芸サークル「突き抜け派」所属の書き手さんです。このサークルにはおもしろい書き手さんが多いですよ。 なお、「突き…

『サドル泥棒事務所』(しーなねこ)その2

今回の記事は前回の続きになります。★未知から既知へ 本作に登場する重要キャラクターに、「黒い服を着た女の人」がいます。この「女の人」はときには黒猫に姿を変え、不可解な状況に置かれ混乱し、弱っていく猫彦を陰ながら支えます。しかし猫彦はその存在…

『サドル泥棒事務所』(しーなねこ)その1

文学フリマ書評第7回目は、しーなねこさんの『サドル泥棒事務所』です。本作品は、文芸サークル「突き抜け派」制作の『突き抜け3』に収録されています。 白昼夢に入りこんだような不思議な小説で、未読の方に説明できるか心もとないないのですが、とても素晴…

本の杜

こういうのもあるんですね。初めて知りました。 神奈川県川崎市で今週末開催される、文芸同人作品の即売会です。 文芸作品オンリー同人誌即売会 本の杜 開催日時:2011年9月24日(11:00〜15:30) 場所:川崎市産業振興会館 ※詳細は下記ホームページからご確…

『レス・フロムファー』(ヤスオモリ)その2

今回の記事は前回の続きになります。★作品紹介『カオちゃん』 言葉を綴ることへの決意表明ともいえる「はじめに」はやや固めの文章になっていますが(前回参照)、本書に収められたほとんどの作品は軽やかなタッチで書かれています。私のおススメは、本書の…

『レス・フロムファー』(ヤスオモリ)その1

文学フリマ書評第6回目は、前回の文学フリマで購入したヤスオモリさんの短編集『レス・フロムファー』。「こういう本に出会えるのが文学フリマの魅力だな」と、改めて感じさせてくれた一冊でした。 本書には、小説ともエッセイとも詩ともつかない文章が二十…

『本当はかわいい画図百鬼夜行』(三平×2)

文学フリマ書評第5回目は、三平×2さんの妖怪小説『本当はかわいい画図百鬼夜行』を取り上げてみます。三平×2さんは「金属バット」というサークル名で同人活動をされていて、何作かの妖怪本を出されています。 私は霊感はまったくなくオカルト系の話も苦手…

『年中無給。せまくてすてきな宇宙じゃないか』(八坂まゆ)その2

今回の記事は前回の続きになります。 ★作品の感想 本書は人物の描き方などに不満な点(最後に追記あり)はあったのですが、最終話(第3話)の最後の4ページの描き方が素晴らしく、大好きな一冊となりました。 飼っていた青虫が死んでいるシーンから始まるこ…

『年中無給。せまくてすてきな宇宙じゃないか』(八坂まゆ)その1

文学フリマ書評第4回目は、八坂まゆさんの小説『年中無給。せまくてすてきな宇宙じゃないか』。本作は、3話の短編からなる連作となっています。 なお八坂さんは、「蜂蜜猫」という文芸サークルに所属されています。★作品紹介 「花に祈ると他人の願いを叶える…

ゲームブックの思い出『ドラゴンクエスト』シリーズ

『ドラゴンクエスト』の話題がちまたで盛り上がっているようなので便乗してみます。でもこのブログで扱うのは、ゲームブックの「ドラクエ」です……。もし『ドラクエⅩ』の情報を求めてここにたどりついた方がいらっしゃったら、ごめんなさいっ。 ゲームブック…

『三日月館幻想博物誌』(三日月パンと星降るふくろう)

文学フリマ書評第3回目は、創作サークル「三日月パンと星降るふくろう」制作の『三日月館幻想博物誌』をご紹介します。 緑をベースにした表紙がとても素敵な冊子です。★作品紹介 5名の書き手がそれぞれに幻想動物を創作調査し、それにまつわる物語を綴ってい…

『世界がやさしくあるためのメモ』(笹井宏之・日野やや子)

文学フリマ書評第2回目は、笹井宏之さんと日野やや子さんの短歌集『世界がやさしくあるためのメモ』を取り上げてみます。★作品紹介 本書は同じ英単語をテーマに、おふたりがそれぞれに短歌を詠んでいくという形態をとっています。たとえば、あいさつを意味す…

『一羽の鳥が飛行機から飛び降りる』(わたりさえこ)

文学フリマ書評第1回目は、わたりさえこさんの短編集『一羽の鳥が飛行機から飛び降りる』です。 わたりさんは「ナタリー」というサークル名で文学フリマに参加されています。★作品紹介 「ガールは海の上を飛んできて、人間に捕まりました」。 これは表題作と…

あと2カ月

文学フリマまで2カ月きりました、ぼちぼち書き始めています。いやー、楽しい♪ でも校正(ゲームブックはこれに時間かかる!)考えたら今月中に決着つけたい。間に合うのかなぁ……。 このブログでは今週から、過去の文学フリマで購入したおススメ本のレビュー…

ゲームブックの今(後編)

「ゲームブック」という言葉自体がもう死語に近い昨今ですが、この21世紀にもある程度の売上を誇っているゲームブックがあります。それが『クイーンズブレイド』シリーズ(ホビージャパン・刊)。私がイメージするゲームブックとは少し違うのですが、広義の…

ゲームブックの今(前編)

1980年代後半から1990年代にかけて出版された数多くのゲームブックは、現在、ほぼすべて絶版となっています。アマゾンなどを利用して中古で手に入れることは可能ですが、気軽に買いそろえられる状況ではありません。しかしながら21世紀になり、創土社をはじ…