ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

『三日月館幻想博物誌』(三日月パンと星降るふくろう)

 文学フリマ書評第3回目は、創作サークル「三日月パンと星降るふくろう」制作の『三日月館幻想博物誌』をご紹介します。
 緑をベースにした表紙がとても素敵な冊子です。

★作品紹介
 5名の書き手がそれぞれに幻想動物を創作調査し、それにまつわる物語を綴っています。各作品の最後には、その幻想動物の形態・生息地・習性などがまとめられており、子供の頃の怪獣図鑑を見るような感覚をおぼえ楽しめました。ただ本編自体の文章には、書き手さんそれぞれの個性が色濃く出ているので、好みが分かれるところかもしれません。
 本書に収められた幻想動物は、翼を広げると90メートルにも達する「虹孔雀」、尻尾に傷を癒す効用がある「カマコヤモリ」、全身が白い毛で覆われた巨大生物「となりのトトリ」、人間に似た頭部と腕を持つ鳥(?)「風鬼」、人工的につくられた物体にあらわれる不可視の意識体「人工妖精」。
 もうこの設定だけで、ご飯が何杯も食べられそうです(笑)

★ピックアップ「となりのトトリ」
 私のおススメ(あえてひとつだけあげるとすれば)は、青川さんの洒脱な文章とSさんの不思議な挿絵が楽しい「となりのトトリ」(青川・S著)。
 ストーリーにいろいろと工夫を凝らしているほかの作品に対し、本作品は幻想動物「となりのトトリ」の生態をたんたんと報告するという形式をとっています。しかしこれにより幻想動物そのものにきちんとスポットがあたり、結果として、幻想動物のおもしろみを浮き立たせることに成功しているように思えました。読み終わったあと、本気で「となりのトトリ」を飼いたくなりましたもん。
 とりあえず好物のバターとクリームを用意しておかねば。