ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

『本当はかわいい画図百鬼夜行』(三平×2)

 文学フリマ書評第5回目は、三平×2さんの妖怪小説『本当はかわいい画図百鬼夜行』を取り上げてみます。三平×2さんは「金属バット」というサークル名で同人活動をされていて、何作かの妖怪本を出されています。
 私は霊感はまったくなくオカルト系の話も苦手なのですが、子供の頃から水木しげる先生の妖怪本は大好きで愛読書となっていました。「水本」のペンネームもそこからきています。
  閑話休題。『本当はかわいい画図百鬼夜行』の紹介に入ります。

★作品紹介
 本書は妖怪本と言ってもおどろおどろしたものではなく、妖怪をいわゆる「萌え化」したエンターテインメント作品となっています。

元来、妖怪とは目に見える存在ではなく、人の想像力が怪異に姿形を与え、それを人が感じ視るというモノでした。そんな妖怪をかわいく感じ視てみたら、こんな本になりました。(本書序文より)

 物語は主人公の「僕」が、深夜、コンビニから家へ帰る途中、両手を広げて道を遮るセーラー服姿の女の子と出会う場面から始まります。実はこの女の子の正体が、妖怪「ぬりかべ」。この後、このかわいらしいツンデレ属性の妖怪と僕のやり取りがおもしろおかしく展開されていきます。


★読書の形
『本当はかわいい画図百鬼夜行』には、作者の哲学や思想が色濃く反映されているわけではなく、ストーリーに「重厚さ」なんてものはありません。ただの娯楽本です。読了後、読者のその後の人生に何らかの影響を及ぼすこともないでしょう。たぶん「あー、おもしろかった」「いい暇つぶしになった」「ぬりかべタン、ハァハァ」くらいの感想しか出てこないと思います。だってただの娯楽本なんだから。でもそれってある意味、「娯楽」のひとつの理想形のような気もするのです。
「文学の意味」なんて小難しいことを考えるとわけがわからなくなりますが、何も考えずに頭をからっぽにして「くすっと笑える“だけ”」の作品も、立派な文芸作品だと思うのですよ。“立派な文芸作品”って言葉はきわめてチープですけどね(笑)