ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

『無限夜行』(めめ)

約一カ月ぶりの文学フリマ書評。
第9回目はめめさんの『無限夜行』です。
めめさんは「くらやみ横丁」のサークル名で昨年の文フリに参加されていました。
本作品は紙媒体ではなく、CD-ROMに作品がおさめられた、
ノベルゲーム(選択肢はなし)となっています。
私は「ノベルゲーム」「サウンドノベル」「ヴィジュアルノベル」の違いが
よくわかっていないのですが、同じようなもんと考えていいんですかね。

★あらすじ
 下記本作のあらすじになります(ホームページ上のあらすじを要約)。

10歳の悠太は兄と二人、祖父母の田舎へ行くために列車に乗った。
だが、幼い兄弟が乗ってしまったのは
「無限夜行(むげんやこう)と呼ばれる奇妙な列車。
列車は生き物のように意志を持って気まぐれに走り、
二人を見知らぬ異界へと連れて行く。
そんな中、ひとつの事件が起きた。
ふとしたことから兄弟は、「切符泥棒」に切符を盗まれてしまったのだ。
切符を失うと、目的地と帰る場所の記憶も失ってしまう。
兄弟は偶然再会した幼馴染の千夏とともに停車中の列車を降り、
切符を求めて不思議な夜の市場へ足を踏み入れる。

「忘れること」と「思い出すこと」。少年たちはどちらを選ぶのか。
そしてこの奇妙な旅の終着駅は……。
不思議な列車と記憶をなくした子ども達の、出会いと別れの物語。


★感想など
 かわいらしい少年少女のパッケージだったので、のほほんファンタジーかと勝手に思い込んでいたら、意外に重く、深い作品でした。子供の持つ残酷さや、失った記憶が徐々に戻っていく緊迫感などが、とてもよく描かれていたと思います。
 前半の展開がややゆっくりすぎるようにも思えたのですが、それも急展開する後半の疾走感を増幅させるための演出だったのかなと、読み終えて(観終えて)から感じました。
 ネタばれが許されない作品ですので、内容にあまり触れられないのが残念。
 ただ、今は「くらやみ横丁」さんのホームページからフリーDLできるみたいです。

 本は紙で読むものという固定観念からなかなか抜け出せないでいる私は、今まできちんとノベルゲームというのを読んだことがなかったのですが、これまでにない読書体験ができてなかなか楽しめました。食わず嫌いはダメですね。
 あと、本書はテキストやグラフィックはめめさんが担当されていますが、プログラムや映像表現は丹酌さんという別な方が担当されており、間の取り方などにいろいろ工夫を感じました。テキストや映像・音楽だけでなく、そういう所にも気をつかわないとならないんですね。ノベルゲーム、作るのたいへんなんだろうなぁ。