ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

江戸時代の妄想青年

誰しも子供の頃、「ここに洞窟を配置しよう」「ここに道具屋を置こう」など、
架空の島や村を作って紙に描いたり、『RPGツクール』や『シムシティ』で遊んだり、
妄想上の世界を表現しようとしたことがあるはずです。
「そんなこと、したことねーよ」という方もいるかもしれませんが、
おぼえてないだけできっとあるはずです。小学校入る前の落書きとかでさ。
で、その作業を、今回ファンタジー世界の同人小説を書くにあたり、
久しぶりにやったわけです。もう30歳過ぎてますが、楽しかった……。
  
子供の頃に描いた空想世界の地図は、人によっては黒歴史かもしれません。
しかしそれが、後世に残ってしまったケースもあります。
『瑞原氏城下絵図』という地図があります。
描かれたのは江戸時代中期の延享5(1748)年、描いた人物の名は小津栄貞。
伊勢国松坂の商家の息子(19歳ニート)です。
栄貞くんは「瑞原」という架空の為政者を作り上げ、その瑞原なる人物が
治める空想都市を、もう、ひくぐらい詳細に描きあげました。
栄貞くんの妄想は地図だけにとどまりません。
「瑞原家」の系図(15代にわたる……)、家臣団の略系図(約250家も……)まで
作成し、そこに書かれた居住地は『瑞原氏城下絵図』に合致するというこだわり。
暇だな、おい。
でも彼の描いためちゃくちゃ詳細な空想地図や架空系図を眺めていると、
人間の想像力ってすごいなと素直に思うわけです。


ちなみに栄貞くんは、その後、医者になるため京に出て、
もとから好きだった古典の世界へ傾倒していきます。
そして「本居宣長」の名で歴史に名を残すことになるのですが、
それはまた別のお話。