『ネバーランドのリンゴ』
ゲームブックの思い出コーナー。
今日は『ネバーランドのリンゴ』です。
平和な妖精の国は、いまや上を下への大騒ぎです。というのも、ガラスが丘のリンゴの樹が、ネバーランドをわがものにしようとたくらむ魔道士バンパーに盗まれてしまったからです。じつはネバーランドの住民が永遠の若さを保てるのは、その樹がつける若返りの果実を食べるからなのです。肝心のリンゴの樹がなければ、妖精たちは遅かれ早かれ滅びてしまうことでしょう。あなたは猫妖精のティルトになり、バンパーを倒して、リンゴの樹を奪い返さねばなりません。
項目数1000を誇る、世界最大のゲームブック!
「剣と魔法を駆使し、悪い敵をやっつける(もしくはお宝をゲットする)」
これはゲームブックの王道とも言えるストーリーで、『ネバーランドのリンゴ』のストーリーも、それから大きくそれるものではありません。ただ、殺伐した雰囲気がただよう多くのゲームブックとは異なり、『ネバーランドのリンゴ』は、童話風あるいは児童文学風と評されるような、牧歌的な雰囲気が作品全体に広がっている点が異色でした。「〜です」「〜ます」調の文体も、ゲームブックでは珍しかったと思います。
『ネバーランドのリンゴ』は子どもの頃に大好きだったゲームブックの1冊ですが、不満がなかったわけでもありません。それはおもしろみのない項目が無駄に多いこと。たとえば
八一三
行き止まりです。通路は北(八二〇)に続いているだけです。八一四
通路は東(八二一)、北(八二二)に続いています。八一五
行き止まりです。通路は北(八二三)に続いているだけです。
こんな項目が全体の3割以上を占めている気がします。
これは、この本の最大のウリが「項目数1000、世界最大のゲームブック」だったことによるものですが、読んでいてうんざりしたものです。独特の世界観や文体に魅了されただけに、なおさら残念に思った記憶があります。
「ウリはそこじゃねーだろ!」と。
たとえるなら、とてもおいしいカレー屋さんの店主が、「うちの福神漬け、最高ですよ。腹いっぱい福神漬けを食べてください」と言っているような感じ。
言いたいこと、わ、わかりますよね? ね? ね?
★参考情報
『ネバーランドのリンゴ』(東京創元社)
著/林友彦
初版発行/1986年7月
アマゾンの中古最低価格 680円(2012年6月24日現在)