ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

『魔法』(+Lantern)

 約2か月ぶりの文学フリマ書評。
 第10回目は、前回の文学フリマで購入した文芸サークル「+Lantern<プラスランタン>」の『魔法』です。この作品は、私も掲載をお願いした「第13回文学フリマ小説棚」(「  」MAGAZINEさん作成)で事前にチェックしていた本で、表紙のイラストに惹かれて購入したのですが、中身も大当たりでした。
第13回文学フリマ小説棚はこちら
 本書には、「信じるなら、そのようなものを」(著・遊佐はなえ)、「な れ そ め」(著・多々畳)の2つの作品が収められており、ともに本書のタイトルともなっている「魔法」がテーマになっています。遊佐さんの文章も多々さんの文章も、とても読みやすく、かつたいへん気持ちのいいものでした。


★「信じるなら、そのようなものを」(著・遊佐はなえ)
下記、本作のあらすじになります。(※私[水本]が書いたものです)

相手が望んだ風景を、現実にしてしまう能力を持った少年ティモシー。
だがティモシーはその能力を自分でコントロールできず、その結果、
父親との関係もぎくしゃくし、思い悩む日が続いていた。
しかしそんなティモシーにも、心を落ち着かせることのできる場所があった。
森に住むダルトンさんの小屋だ。

 物語はこの後、ティモシー、世捨て人のダルトンさん、そして主人公同様孤独を感じている少女との交流が軸となり、ささやかな幸福感に包まれながら進んでいきます。しかし後半から新たなキャラクターが登場して展開が急変。状況の変化にとまどうティモシーですが、そこでいろんなことを考え学び、成長していくのです。
 
 読んでいてどんどん物語に引き込まれ、文章のうまさとともに、構成力の高さにも感心しました。とても素敵な作品です。


★「な れ そ め」(著・多々畳)
 小学5年生の男の子の目線で、その日常が描かれた作品。学校の友人や同じマンションの住人との触れあいが物語の軸となっています。
 起承転結のはっきりしていた遊佐さんの「信じるなら、そのようなものを」に比べ、こちらは比較的たんたんと物語は進んでいきます。なので、あらすじを書くのをあきらめました(笑)
 たまに切ないシーンもでてきますが、基本的には平和な小説。こうしたほっとする小説に出会えると幸せな気分になります。第13回文学フリマで購入したなかでは、これからもっとも読み返す作品となりそうです。