ゲームブック 温故屋

水本シズオと申します。「ゲームブック」の話題が中心のブログです。

『エヌ氏の休日 ミニゲームブック集1』

本日のゲームブックは、『エヌ氏の休日 ミニゲームブック集1』。
FT書房さんがkindleで発表されている短編ゲームブック集です。
たまには軽い感じの作品を気軽に楽しみたいという方におススメ。
計6作品、書き手さんは4人。それぞれに個性があって楽しめます。
以下、各作品を簡単に紹介&感想。

・「エヌ氏の休日」(著・杉本=ヨハネ
18パラグラフ。
星新一のショート・ショートを思わせる分岐小説。
どの選択肢も「この先を読みたい」と思わせる魅力に満ちています。
あなたもエヌ氏になって、歓喜と悲哀の入り混じる人生を体験してみてください。

・「ワナの真ん中で愛を叫ぶ」(著・神崎マコト)
33パラグラフ。
「生命ある者に出会った途端、無条件でその相手にほれてしまう」という毒をうたれてしまった主人公。目覚めた地下牢には怪物がうようよいて……。そんな絶体絶命のシチュエーションからスタート。うまい導入ですよね。
「褐色のグラマラス美女」「艶めくもち肌のご令嬢」などと掲示された扉が並んでいるのですが、説明するまでもなく、中にいるのはモンスター。ほれてしまったらジ・エンド。

・「ネグラレーナの平日」(著・杉本=ヨハネ
16パラグラフ。
「しまった、これはBAD ENDの流れだ」と思ったら「GOOD END」だった。それも2回続けて。
そうだった。ここは、毎日あらゆる悪徳が繰り返される港湾都市ネグラレーナ。凝り固まった常識や安っぽい倫理観は通用しないのだ。

・「最悪英雄ワルカード!」(著・清水龍之介)
24パラグラフ。
ゲームブックの戦闘というと、通常は剣や魔法で戦うといった感じですが、本書の戦闘方法は「舌戦」。つまり相手を論破すると勝利となります。
なるほど、こういうアイディアもあるのかと感心しました。

・「帰っちまったヨッパライ」(著・清水龍之介)
28パラグラフ。
私の中ではこの作品、「おしっこを我慢する物語」です。

・「天使のいたずら」(著・ロア・スペイダー)
19パラグラフ。
主人公はプレイボーイの貴族。差出人不明の恋文を受け取り、待ち合わせ場所に向かいます。しかし、そこには手紙の差出人と思われる女性が数名いて……。
ここまで感情移入できない主人公はめずらしいです(笑)「GAME OVER」になっても全然くやしくない。むしろ「GAME OVER」を楽しむ作品。


★参考情報
『エヌ氏の休日 ミニゲームブック集1』(FT書房)
著/杉本=ヨハネほか
初版発行/2014年11月
価格/305円(2015年9月26日現在)

『烈拳カンフー大冒険』

懐かしのゲームブック、今日は『烈拳カンフー大冒険』。
個性的な作品が多数輩出した、ゲームブック界の異端児「エキサイティング・ゲームブック・シリーズ」の15作目。
この作品は子供時代、未プレイ。それどころか、その存在を知ったのも最近。図書館で取り寄せることができたので遊んでみました。


〔あらすじ〕
君はきびしい中国拳法の修業に長い間、耐えてきたカンフー(功夫)の達人だ。鷹拳、蛇拳といった他流派の技やヌンチャク、棍などの古武術も身につけてきた。もう、寺で学ぶものは何もない。そう考えていたおり、人々から恐れられている、無法者の首領の噂を耳にした。この拳王なる人物、いまだかつてどんな武芸者にも負けたことがないという。君は体中の血が騒ぐのを感じた。一度でいいから対決してみたい。思いは日増しにつのり、ついに寺を出る決意をした。しかし拳王と対決するのは容易なことではない。拳王の本拠地・嵩山は、天然の要塞ともいえる地理条件を備えているうえ、軍隊を脱走した武装兵士や山賊一味が、門の警備にあたっている。さらに城内には、四天王と呼ばれる強者も拳王の身辺を警護しているという。果たして君は、拳王を打ち倒せるだろうか!

主人公(プレイヤー)は中国拳法の達人。無法者たちの首領・拳王を倒すべく、敵の本拠地である嵩山に乗り込むというストーリー。
ゲームブックというと「剣と魔法」「西洋風」が主流ですが、本作は中華の雰囲気が漂う異色作。目新しさもあって楽しめました(ルールが複雑だけども)。文体も読みやすく、ジャッキー・チェンのコミカルなカンフー映画を見ているような、娯楽性に富んだ作品です。

登場する敵キャラ(一部味方も)も個性的。
酔拳をきわめた老人、太極拳の天才少年、サイ(刀の一種)を装備した老婆、集団で襲いかかってくる空手十兄弟、二丁鎌を振り回す暴れん坊、青龍刀の女剣士(四天王)、三節棍をあやつる坊主(四天王)、西洋の妙技「ボクシング」の使い手(四天王)、妖術使いの老人(四天王?)などなど。琵琶をかなでる美しい拳王もキャラが立っています。

機会があれば遊んでほしいゲームブックですが、いかんせん入手は困難。本作だけでなく「エキサイティング・ゲームブック」全般に言えることですが、このシリーズの作品は中古市場で高騰しちゃってるんですよねえ……。
さて、それにしてもこんな30年も前のマイナーなゲームブック、レビュー書いてる人などいないだろうと思っていたら、古参ゲームブックサイト「冒険記録日誌」さんが、レビューどころかプレイ記録を載せてらっしゃったので楽しく拝読。こちらを読んでいただければ、だいたいの作品のイメージはつかめると思います。
冒険記録日誌/烈拳カンフー大冒険(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原書店)その1


★参考情報
『烈拳カンフー大冒険』(桐原書店
著/スーパー頭脳集団アイデアファクトリー
初版発行/1986年3月
アマゾンの中古最低価格 取り扱いなし(2015年9月19日現在)

『吸血鬼の洞窟』

懐かしのゲームブック、本日は『吸血鬼の洞窟』。
本作は「Golden Dragon」シリーズの1巻目にあたります。「Golden Dragon」シリーズは、デイヴ・モーリスとオリバー・ジョンソンが執筆したゲームブック・シリーズ(全6巻)。wikipediaによると、日本では英国と同じ順番ではなく、難易度の低い順から刊行されていったそうです。
子供時代にこのシリーズの作品を何冊か遊んだことはありますが、本作は未プレイ。最近初めて読みました。
なおモーリスとジョンソンは、「ブラッド・ソード」シリーズの著者でもあります。


〔本あらすじ〕
ウィストレンの森の奥深く、ひっそりとしたたたずまいの屋敷の地下には吸血鬼テネブロン卿が住んでいるという。テネブロン卿はたいへんな値打ちのある財宝を隠し持っているといううわさだが、その財宝は卿自身と、手下の魔物たちや、卿の手にかかってどれいにされた仲間の冒険者たちの手で、厳重に守られているという。あなたは吸血鬼を倒せるか。

以下、ネタバレもあり。
シリーズ1作目とあって確かに難易度は低め。F・Fの世界を戦い抜いてきた勇者の方々なら、余裕でクリアできてしまうでしょう。
私も何度かプレイしましたが、体力ポイントがゼロになることはほとんどありませんでした。その代わり、一発死が多い印象。最初のプレイでは、宝箱開封に失敗して自分の首を剣で切ってしまいゲームオーバー。2回目は、ガイコツたちの演奏に聴きほれて動けなくなりゲームオーバー。そんな感じです。

私が好きな敵キャラ(?)は、不思議なチェスで勝負を挑んでくる老人。いかめしい顔つきをしているのですが、自分が勝負に勝つと嬉しそうにする姿がかわいらしです。負けても、素直にご褒美くれるし。

やや面食らったのは、ラスボスである吸血鬼テネブロン卿との戦い。
正攻法で戦ってももちろんいいのですが、最適解は「逃げる」という選択肢。なんか知らんうちに勝手に死んでくれます。
ラスボス相手に「逃げる」が有効というゲーム、古今東西あっただろうか。斬新だなっ。


★参考情報
『吸血鬼の洞窟』(東京創元社
著/デイヴ・モーリス
初版発行/1986年3月
アマゾンの中古最低価格 270円(2015年9月4日現在)

『銀魂』で

自分の話で恐縮です。
amazonで販売している拙著『ゲームブック ある剣士の物語』が、現在「通常1〜3週間以内に発送します」状態になっています。委託先の密林社にはまだ在庫があるので、おそらく9月上旬には販売が再開されるかと。よろしくお願いいたします。

さて、amazonでは今週水曜から木曜にかけて7冊ほど売れ、残り1冊が金曜に売れました。そんなに一気にはけることが少ないので、なんでかなーと思っていたのですが、どうやら今週放送されたアニメ『銀魂』でゲームブックネタがあったよう。その影響なんですかね。確定はできませんが。だとしたらテレビの影響力って、なんだかんだ言ってまだあるのかなと感じたしだい。
ちなみにその話(「何もねぇよ夏 2013」)、コミックでは『銀魂』52巻に収録されているようです。
過去記事「週刊少年ジャンプ」(2013年9月24日)

ドラえもん』にもゲームブックを題材にした話があるので、テレビアニメでまたやってくれるといいな。
過去記事2012年5月1日「火竜の秘宝」

『トカゲ王の島』

懐かしのゲームブック、今日は「ファイティング・ファンタジー」シリーズから『トカゲ王の島』。
著者はイアン・リビングストン大先生。

〔あらすじ〕
火山島に住む恐ろしいトカゲ男たちの軍隊に連れ去られたオイスターベイの若者たち。奴隷にされた彼らは飢えと死の恐怖にさらされている。彼らを支配するのは黒魔術とブードゥー魔術を駆使する危険なトカゲ王だ。苦しんでいる囚人たちを救い出せるのは君だけだ。
君にはこの危険にみちた使命に挑戦する勇気があるか!


表紙にいるトカゲ男がラスボスのトカゲ王。こいつの頭に注目。頭にカニの足のようなものが生えていますが、これは残忍で邪悪な寄生生物「ゴンチョン」のもの。トカゲ王は自身の頭にこのゴンチョンを寄生させることで並外れた力を手に入れ、島における絶対的な権力を保持しているわけです。
このゴンチョンの秘密をある人物から聞き出せるか否かが、クリアのカギとなっています。

さて本作は、島に君臨する敵のボスを倒しにいくという超王道のストーリー。ゲームブックとしてもひねくれた構造ではなく、だいたい2つの分岐と集約をくりかえすオーソドックスな造り。他のFF作品にくらべて冒険自体の難易度は低めで(敵は結構強いけど)、丁寧にヒントやアイテムを拾っていくことで冒険を有利に進めることができます。
プレイ後、強くインパクトの残る作品ではありませんが、数回は楽しく遊べる良作ではないでしょうか。

造りこんだシステムやストーリーのゲームブックももちろんいいのですが、こういった単純ながらも楽しめるゲームブックも、私は気楽に読めて大好きです。


★参考情報
『トカゲ王の島』(社会思想社
著/イアン・リビングストン
初版発行/1985年12月
アマゾンの中古最低価格 200円(2015年8月26日現在)

『Lifeline...』

最近人気のゲームブック風アプリゲーム『Lifeline...』をプレイしてみました(有料)。
海外で誕生したゲームですが、日本語版にも対応しています(Androidは現在日本語訳未対応)。

物語は、主人公(女性)であるプレイヤーが、ある惑星に墜落した宇宙船の乗組員(男子学生)より、メッセージを受け取るところから始まります。パニックにおちいっている乗組員を落ち着かせ、救出すべくナビゲートするのがプレイヤーの役目です。
ゲーム内にイラストはいっさい出てきません。乗組員からのメッセージがたんたんと表示されるのみ。時々2つの選択肢が出てくるので、プレイヤーはそのどちらかを選びます。たとえば、こんな風に。

学生ハンドブックには墜落したときの仕方なんて書いてなかったよ。
・わかったわ。落ち着いて。
・もっと気楽に行きましょうよ。

僕は…もう無理かもしれない。みんな死んでしまったんだ。乗組員全員が…僕は…
・残念だったわね…
・前に進むしかないわ。

食べ物は手に入れたことだし、これから研究室の様子を見に行くか、それとも今晩寝る場所について考えるか。どう思う?
・研究室へ行ってみたら?
・寝る場所について考えたら?

本作の特徴は、ふつうのゲームブックのようにプレイヤーの都合で読み進めることができない点にあります。乗組員からの通信が一気にくることもあれば、次の通信まで数十分、もしくは数時間待たねばならない場合もあるというわけ。このシステムが、実際に乗組員と連絡を取り合っているような臨場感をもたらしてくれます。
ただ、本筋はほぼ一本道で、どちらの選択肢を選んでも、乗組員のメッセージが少し変わるだけでストーリーが変わらない箇所も多いです。そのためゲームとしては物足りないと感じる方もいるかもしれませんが、どきどきはらはらのSF小説という点ではものすごく楽しめました。お試しあれ。

こちらのブログの方が、詳しい紹介をなされています。
惑星からの脱出!トークゲームアプリ【LIFELLINE...】の感想・レビュー/iPhoneシミュレーションアプリハック

『覇邪の封印』

懐かしのゲームブック、今日は「ファミコン冒険ゲームブック」から『覇邪の封印―バァンドゥラの魔獣』。
原作はパソコン、ファミコンセガマークIIIなどで発売されたロールプレイングゲームです。


〔あらすじ〕
伝説の勇者・イアソンによって封印されていたバァンドゥラの通路が開かれてしまった!異次元に続くこの通路は、次々と凶暴な魔獣たちを吐きだしてくる。平和だったアルカス公国も異次元獣に攻撃され、今や壊滅寸前。この国を救う、たったひとつの方法は、異次元獣たちに奪われた“覇邪の封印”をとりもどすことだ。俺・アーガスと3人の仲間は、アルカシア王の命を受けて旅立った。

分岐はあるのですが、同じ所をぐるぐる回ることも多く、ルートもほぼ一本道。「ファミコン冒険ゲームブック」シリーズによくありがちな構造です。
とくに印象に残る作品ではないのですが、小学生の頃、全裸のボス「テラリン(女性の姿をした魔獣)」の挿絵にどきどきした記憶が……。大人になってから古本を買い直したのも、その挿絵を確認するためだったりします。けど、やや記憶違い。泡に包まれた女性と記憶していたのですが、泡ではなくウロコ(?)でした。子供の頃の記憶なんてそんなもんですよね。

さて、ゲームブックファンの間ではよく、「ファミコン冒険ゲームブック」は粗製濫造の代名詞的存在としてやり玉にあがります。すなわち「ゲームブック衰退」の要因を作った存在であると。そういった面も確かにあったかもしれませんが、テレビゲームを持っていなかった少年少女に、ゲームの追体験を味あわせてあげたという意味では、貴重な存在だったと思います。

★参考情報
『覇邪の封印―バァンドゥラの魔獣』(双葉社
著/上原尚子
初版発行/1988年3月
アマゾンの中古最低価格 1,000円(2015年8月16日現在)